『谷川俊太郎の33の質問』


この本を読んでみようと思ったのは、
『質問力~話し上手はここがちがう』(齋藤孝著)の中で、対話の具体例として採り上げられていて、
それがとても興味をそそられる内容だったのがきっかけでした。
このタイトルは、アメリカの作家ノーマン・メイラーの“69の問答”にちなんでつけたそうです。
(ノーマン・メイラーという作家、みなさんご存知ですか?私は初めて知りました・・・)
谷川俊太郎が、友人や初対面の著名人に、33の質問をするインタビュー形式になっています。
全員に同じ質問をします。
インタビューは、1作目で1975年頃、続編は1985年頃のものです。
1作目と続編で約10年空いていますが、時代の変化や谷川氏自身の変化とは関係なく、
あえて全く同じ質問です。
続編から10年経った今読んでも、全く色褪せない、古く感じない内容となっています。
それだけ質の高い質問ということなのでしょう。
齋藤氏の著書『質問力』の中で、“質問は思いつくものではなく、練り上げるもの、
と思うのが上達の近道である”と書かれていたのですが、まさにこの言葉が当てはまる33の質問です。
詩人として言葉を大切に扱い、言葉とじっくり向き合い、発想の豊かさとおもしろさが詰まった質問の数々です。
その中のいくつかを挙げてみます。
「金、銀、鉄、アルミニウムのうち、もっとも好きなのは何ですか?」
答える人は、好きなものを選び、なぜ好きなのか理由を答えます。
その理由も人それぞれで、いろんな考え方、捉え方があります。
これは、すべての質問に通じることでもあります。
「草原、砂漠、岬、広場、洞窟、川岸、海辺、森、氷河、沼、村はずれ、島―――どこが一番落ち着きそうですか?」
谷川氏曰く、この質問は、はじめ「どこが好きですか?」だったけれど、
“好き”だと対象化してしまうので、自分がそこへ行ってその場というものを考えてほしいと思い、
「落ち着きそうですか?」としたそうです。
具体例を挙げつつ、その人の潜在意識に問いかける質問をつくりあげているのには感服しました。
「前世があるとしたら、自分は何だったと思いますか?」
作曲家の林光が、“キノコ”と答えたのには、ちょっと笑ってしまいました。
時代は違うけれどまた自分、と答えた人もいました。
他には、「自信を持って扱える道具をひとつあげてください」
「好きな匂いを一つ二つあげてください」
「あなたが一番犯しやすそうな罪は?」
「宇宙人から〈アダマペ プサルネ ヨリカ〉と問いかけられました。何と答えますか?」
などなど、挙げ出したらきりがありません。
この33の質問を通して、質問する側もされる側も、知らなかった意外な一面が引き出され、
その人の人間性や価値のようなものが浮かび上がってきます。
私も、友人数人に、ピックアップしたいくつかに答えてもらいました。
こんな考え方もあるんだ!こんな一面もあったんだ~、とあらたな発見に、
同じ友人なのに今までとは違って見えました。
上司や同僚、家族に試してみるのもおもしろいでしょうね。
コーチの方は、この質問に、コーチング・スキルで質問を加えてみてはいかがでしょう。
さらに、その人のことを知ることができ、相手も自分のことを知る機会になるのではないかと思います。
でも、33問全問は、かなり時間がかかりそうです。
谷川俊太郎の33の質問 (ちくま文庫)』 谷川俊太郎 著

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