その瞬間瞬間、最良の判断をする


映画『THE有頂天ホテル』のワン・シーン。
レストランで仲良く男女が食事をしています。
男性が、“灰皿”を“取り皿”と勘違いし、女性に料理を取り分けている・・・。
ご当人達は、いっこうに気づく様子はありません。
そこで、役所広司演じる副支配人は、他のテーブルの灰皿をすべて回収し、
全く雰囲気の違う会議室の灰皿に替えるよう指示します。
お客さまに恥じをかかせない、嫌な思いをさせない、心に視点を置いた判断をします。
このワン・シーンは、映画用にデフォルメされているわけでないと思います。
ホテルは、有り得そうもないことが、本当に起こってしまう空間です。
ホテルマンは、常に、その場その場で、最良の判断をしなくてはなりません。
“機械”でなく、対“人間”。
“ロジカル”で動く仕事じゃなく、“心”で動く仕事。
“知識”よりも“知恵”が必要です。
“心”だから、解決策はひとつではありません。
お客さまの数だけ、ホテルマンの数だけ、あります。
いくつも答えがあるからこそ、最良の判断をしなくてはいけない。
むずかしいですね。
この映画のワン・シーンのように、今でも鮮明に脳裏に焼き付いている体験が私にもあります。
フロント・ロビーに感じの良いご婦人が立っていて、お連れの女性と談笑しています。
私は、ギョッとしました。何を見て、ギョッとしたのか・・・。
なんと、トイレットペーパーが、ご婦人の足をつたい、ロビーの絨毯にまでダラ~リ垂れています。
見る限りでは、トイレットペーパーは、スカートの中へと続き、どうも下着に巻き込んでいる様子。
どうしてこんなことが??
一瞬、私の頭の中は、パニック状態に陥りました。
まったく気づいていないご本人に、こんな悲しすぎるバッド・ニュースを、どういうふうに伝えたらいいのでしょう?
お客さまと私達スタッフの置かれている状況を冷静に把握し、その時、私にできる最良の判断をしたつもりですが、
それが正しい答えだったかどうかは今もわかりません。
あなたは、どんな最良の判断を心がけていますか?

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