その会話はどこに向かっていますか


フロント勤務の頃の体験談です。
あるスポーツ競技の各国チームの選手達が宿泊していました。
アフリカのある国のチームの女性選手が、フロントへやって来ました。
「この近くで、籠バックを売っている店はある?」
「専門店はこの辺にはないですが、お調べしましょうか?」
「あなたは、籠バック持ってる?」
「持ってます」
「籠バックは好き?」
「好きです」
そして、彼女は笑顔で去って行きました。
よくわからず、質問されるがままに答えた私。一体、何だったんだろう?
しばらくして、さきほどの彼女が現れました。
両手と小脇に、たくさんの籠バッグを抱えて・・・。
彼女の国のチームは、ワールドカップに参加するのは今回が初めてでした。
彼女の国は、おそらく裕福ではありません。
せっかく豊かな国・日本に来たのだから少しでも稼いで帰ろう。
まずは、一番身近で声を掛けられるホテルスタッフからだ!
たくましさを感じました。
日本人が海外旅行に行ったとしても、ほとんどの人が考えも及ばない発想でしょう。
ベルガールさんも私と同じパターンにはまったそうです。
お互いに苦笑いしました。
私のように、聞かれたことにただ反応して答える、まったく受身な会話。
それだけでは、お客さまが何をしたいのか聞き取ることはできません。
常に、お客さまが何をしたいのかを意識して会話する。
すると、質問に答えるだけでなく、質問をして聞き出す(引き出す)ことができます。
今思い出しても、私はお客さまから引き出すよりも、聞かれることに答えることがほとんどでした。
サービスを提供する仕事に就いている人間の会話ではありませんでした。お粗末過ぎます。
この会話はどこに向かっているのか、お客さまはどうしたいのか、“会話の先を読む力”。
そのために、“お客さまと共に会話を作り出す力”。
さまざまな国のお客さまと接する機会が多い職場では、特に高めておきたい能力のひとつです。

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