ジャック・ロンドン著 『火を熾す(おこす)』


心が突き動かされるような小説に出会いました。
火を熾す (柴田元幸翻訳叢書―ジャック・ロンドン) 』 です。
翻訳者は柴田元幸氏。
私の好きな作家ポール・オースターの翻訳を手がけている人なので、
自然と本に手が伸びていました。
9つの短編小説の一つ目『火を熾す』で、初っ端から衝撃を受けました。
人間の原始的な、根源的な部分を取り出して、目の前に差し出されたような、
ある意味、ショックを受け、と同時にある意味、全身の細胞に染み入るような感覚に陥りました。
9編ともに柴田氏が選んだだけあって、
ジャック・ロンドンという作家の人生観や表現力の豊かさを堪能できる1冊となっています。
100年前に書かれたとは思えない作品ばかりです。
最後の『生への執着』は、生きるとはこういうことなのか・・・
私の体感したことのない“生きる”が、そこにありました。
この小説とまるで呼応するかのように出会った
登山・冒険家の植村直己のインタビュー。
「物質的に恵まれた中では、
      人間本来のものは失われている」
植村直己はこう語っていました。
植村直己は、ジャック・ロンドンの描く人間本来の“生きる”を体験した人なのだと確信しました。
ジャック・ロンドンは、自身の人生と重ねあわせるかのように、
人間本来の姿を、太くそして短く描いた作家だったのだと思います。

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