幕末・下級武士の暮らしを知る 山川菊栄著 『武家の女性』


先日、ある弁護士さんとの雑談のなかで、話題になった本に興味を持ち、読んでみました。
山川菊栄 著 『武家の女性』 です。

幕末の水戸藩・下級武士の家に生まれ育った著者のお母さん、おばあさんの思い出話をもとに、当時の下級武士の生活や庶民の暮らしぶりが、いきいきと描かれています。
歴史小説では味わえない、当時の人々の習慣や文化、食べ物のことなど、
現代の生活と比較しながら、当時の暮らしをありありと感じることができます。
砂糖は貴重品で、砂糖を知らない子どもは、塩だと勘違いして、
「○○さんところの塩は甘かった」
こういう初々しさが、愛おしく、やさしさを持って描かれています。
当時は、人と人との関係が、今より、もっともっと濃密です。
しがらみや面倒なこと、自分ではどうしようもないこともたくさんある時代ですが、
それが反対に、誰もがいきいきと生きていた、そんな時代だったのではないかと思います。
物を大事にする。
物がじゅうぶんでないからこそ、物の扱いを知っていたのだと感じます。
わたし達は、物に溢れた時代に生きていますが、
物の扱い方を知らない、本当の意味で、物と一緒に暮らす、ということを知らないのだ、
と身に沁みて感じました。
この時代の人たちの生き方があって、今のわたし達がいることを忘れず、
シャンと背筋を伸ばして、毎日を丁寧に暮らしていきたいです。
そう思わずにはいられない、一読の価値がある名著です。

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